華様ドラマ考

香港・台湾・大陸の日本未放映の華流ドラマをご紹介

格子間女人

 

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出演
唐嫣、呉卓義、李承鉉、張熙媛、韓張、劉淆希

あらすじ
外資系企業MPLで働くCherieは海外セールスの実績を元により高いポジションを望むキャリアウーマン。
上司である女性Miniとのライバル争いの果てに望みのポジションを勝ち取る。
直属の上司であるRayはCherieを部下としても一人の女性としても一目置いていたが、彼自身内部闘争に負けてMPLを去ることに。
Cherieには画家である恋人沈培がいるが、Cherieに早く結婚をして欲しい年老いた両親は良い顔をしない。
芸術家である沈培との間に価値観の相違を感じるようになるCherie。
結婚を望まない沈培に対して不満を抱く中、チベットで沈培が事件に巻き込まれてしまう。
何日も生死を彷徨い帰国した沈培は生きる気力を失くし、酒びたりの生活に。
懸命に介護をするCherieであるが、MPLでの大きな案件を抱えた中疲れと不満と不安で限界を感じてしまう。
前向きになれない沈培、その沈培の母親に罵倒され距離を置くことに。
Cherieの親友である暁恵に沈培の様子を見てもらうよう頼む。
MPLを離れた後も仕事面においても、プライベートでも
何かとを気にかけ助けてくれるRayに対して安らぎを感じるようになるCherie。
同じ画家である沈培の父親は息子の実力を認めないが、画家としての沈培の内面を理解する暁恵は個展を開くことを提案する。
理解者を得た沈培は前向きになるが、CherieとRayが一緒にいるところを目撃し不安になる。
個展のオープンを前にCherieからあらためて距離を置きたいと告げられ自暴自棄になる沈培。
そんな中、ライバル社に転職したMiniと大口契約で争うことになったCherieはRayとMiniとの過去のある出来事を知り……

所感
大陸のベストセラー小説のドラマ化。
いわゆる偶像劇とは異なりリアリティを随所に感じる。

まずはCherieの母親。年老いてから授かった子供なのかこの両親が非常に年をとっている。
最初、祖父母が育てているのかと思ったほど。
この母親が娘の仕事のことや恋愛や、果ては一人暮らしをすることまで何かと口を挟む。
「あなたのためなのよ」と言いながらも自分の思い通りに事が運ばないと癇癪を起こし娘を責めるという迷惑な母親。
過干渉な母親と従順に従う娘というイマドキの親子関係が凄くリアル。
その娘は上昇志向が強く、仕事と恋愛を天秤にかけながらもやはり仕事の方に重きを置いてしまうという点も。

次に画家の彼氏。
出会いは街中ですれ違いざまに互いの携帯電話を取り違えたことから。
というなかなか嘘くさい始まりではあるんだけど(爆)
まあ、画家って言われたら自分とは違う世界の人ってことで興味はわくよね~
ただ芸術家ゆえに常識知らず。
彼女の両親に家に招待された大事な日に遅刻するわ、おみやげに持ってきたフルーツは腐ってるわと気が利かないにもほどがある。
ただでさえ、芸術家に大事な娘を預けられないという過干渉な母親を前に既にペナルティつきまくり。
しかも結婚には興味ないとかまで両親を前に口にしてしまう空気の読めなさ加減。
でも自分とは全く違う世界に住む人間を好きになるという仕事一筋の彼女の気持ちもわからなくもない。
結局最初から違いすぎる価値観の性で破綻するのは目に見えてるんだけど。

三番目にはあらすじでは触れなかったけど、「富二代」の女性。
苦労しらず、世間知らず、ワガママ、でも上昇志向はあるのである程度努力はする。
そんな中好きになった同僚の相手は庶民なのでお金に関しての価値観が全く異なる。
好きになったら猪突猛進。相手が躊躇しようと、引いてようとお構いなし。
押して、押して押しまくって、get。
これがまた、ウルサイ、ウルサイ。
演じる劉淆希はルックスは菅野美穂似の可愛さなんだけど、
声が高いうえに、ギャーギャーとわめきたてるそのお嬢様キャラがハマっているぶんすごく見ていてウザい(苦笑)
素直に育っている分、悪気はないんだけどやる事、やる事庶民の感覚とはズレまくっていて彼氏を呆れさせるけど、
そんな姿を彼氏は可愛いと思うんだろうな~ってところもわりとリアル。

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面白いと思ったのは、全30集ある中でとっととCherieと沈培の仲が終わって
RayとCherrieのカップリングで話が進んでいくと思いきや、
24集ぐらいまで沈培と別れる別れないが続いた。

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そう、男主角であるRayは出演シーンから言えば沈培より多いかもしれないが、あくまでも傍観者で
後半までそれほど話には絡んでこないという中途半端な扱い。
しかし、白馬の王子様の如くCherieが危機に遭遇すると颯爽と登場し助けてくれる人。
MPLを追われたのも彼女を庇ったため、誕生日だといえば遠出のデートを設定、
仕事に疲れたといえば条件の良い転職先を紹介したり、当て逃げにあっている場面に
偶然出くわせば怪我を負ってまで助けたり、
泥酔している彼女をバーで見つけては家まで送り寝かしつけ、朝起きた時に食べるようにと
消化の良い料理まで用意して帰っていき(一切手を出さず)、
過労で家で倒れている彼女を病院まで送ったりとここまで都合の良い男も居るか?ってほど。
このRayという存在自体が唯一リアリティが無いかな(爆)
Rayは仕事の出来る女性という部分で尊敬もしているけど、それ以上に一人の女性としてずっと好きだから
いつでも手を差し伸べているんだけど、Cherieはその気持ちを知らないわけでもないのに
良いようにあしらっているようにしか見えない。
彼女の気持ちは揺れながらもずっと沈培にあって、自暴自失になった後もずっと支える守ると言い続けていて
確かに苦労しながらも彼の側に居たんだけど、限界が見えてしまう。
まあ、これはCherieに非は無いわな~
いつまでも立ち直れない、芸術家のメンテリティに疲れきっちゃうっていうのはわかる。
でも案外早い段階でそうなるのかと思ったら、最後まで引っ張ったので唐嫣と呉卓義のカップリングを楽しみにしていたファンには不満だったかも。

 

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呉卓義演じるRayは前述の通り、スーパーヒーロー的な完璧な男なのでキャラとしての面白みは無い。
なので演技もずーーっと同じ。
極端に悩む姿もなく、箍が外れるようなシーンもなく、常に冷静で微笑を絶やさない出来た男。
まあ、最後のほうは思わぬ事実がわかって怒涛の展開にはなるんだけど、でもやっぱ基本は変わらなかった(苦笑)
演じていて欲求不満にならなかったのかな~ってちょっと思った。

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それに比べて、演技のふり幅が大きいのは李承鉉演じる沈培。
最初はお金には苦労していない挫折知らずの自由奔放な画家の姿、
事件に遭ってからは自信を失くし生きる気力も失った陰鬱な姿と、
酒に溺れヒステリックに怒鳴り散らす姿、
暁恵と出会ってからは自分自身を客観的に見つめ直し、再び前向きに生きる決心をした姿、
と回を重ねるごとに人間臭い面が見えて得な役。
ただのかませ犬的な扱いだと思ったら、どう見ても主角的な扱いで見ていてビックリ。

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女主角の唐嫣は向上心が強いキャリアウーマンには正直見えなかった…
キレイだし知的には見えるんだけど、何十人も部下を従えているヤリ手の主任という役には説得力が無い感じ。
本人もこの役を演じるにあたって相当プレッシャーがあったらしいけど、役に合わせて初めて髪を短く切ったりと
それなりに役を固めてきたみたいだけど、何せ吹き替えになっているので台詞からは上手いとか下手とか判断出来ないんだよな~
ただ揺れる女心や恋する女の可愛さとか得意な部分の演技は非常にスムーズ。
やはりそういう役が合ってるよねって思った。

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Cherieの親友・暁恵を演じた張煕媛。
最初条件の良い結婚をして仕事も順調でお金に困らない気ままでセクシーな奥様って感じだったんだけど、
新婚何ヶ月で浮気をされた挙句に、離婚。
莫大な慰謝料をもらって仕事も辞めて、もっぱらCherieの家に居候。
Cherieにとっては何でも話せる親友だけに、面度を見切れなくなった沈培の面倒まで頼む始末。
これがまた、見た目と違い根っから性格が良いというか切符の良い姐さんぶりで、何の打算も無いまま沈培の良き理解者になってしまう。
彼の画家としての内面を言い当てて、沈培の心を開かせてしまうだけでなく、やる気のなかった沈培を
個展を開く援助をすることで画家としてもう一度大成してもらう手助けまでする。
いや、本当~に気持ちの良い姐さんキャラですごく魅力的。
最後まで沈培を見捨てずに見守り続けることによって彼は立ち直れるんだよね。
この役は美味しい役だと思うわ。

台湾や大陸の「偶像劇」とも、ましてや香港のTVBのドラマともテイストの違うドラマ。
原作がある故なのか話としてとても面白い。
偶像劇のご都合主義や、軽さ、お決まりのハッピーエンディングにちょっと飽き飽きしている中、とっても新鮮で凄く楽しめた。
恋愛面に焦点を絞って描いてしまったけど、企業間の駆け引きも他キャラのエピソードもどれも破綻無く進むし見ていてまったく飽きないのでオススメ。