華様ドラマ考

香港・台湾・大陸の日本未放映の華流ドラマをご紹介

小時代

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出演

陳意涵、何潤東、喬任梁、江鎧同、陳匡怡、徐冬梅、李易峰、徐越

あらすじ
林蕭、顧里、南湘、唐宛如の4人は同じ大学に通う親友同士。裕福な家庭の顧里の
持ち家である豪華なアパートで共同生活をしている。
作家を夢見る林蕭は有名な雑誌「M.E」を発行する出版社にアルバイトとして雇われる。
ヤリ手でクールな社長である宮洺に人気作家の周崇光の専属編集者となるよう支持される。
周崇光は20代前半にして数々のベストセラーを生み出しているがワガママで子供のような
性格のため編集者が長続きしない。
そんな状況を知らないまま専属となった林蕭は数々の嫌がらせを受けながらも必死に周崇光と対峙する。
自分とそれほど年齢の違わない林蕭に対して興味を持ち始める周崇光。
それは彼にとっては初恋のような感覚だった。
裕福な家庭で育った顧里は友人達には優しく面倒見が良い反面、気が強くプライドが高いため長年付き合っている顧源とは度々衝突してしまう。
そんな気が強いがモロい部分も熟知している顧源は彼女と結婚をしたいと思っているが
彼女を好まない母親によって仲を裂かれてしまう。
母子家庭で育った南湘は画家を目指しているが、病弱な母親のためお金の苦労が耐えない。
その美貌からある日モデルとしてスカウトされ、一躍CMモデルとして人気者になる。
そんな彼女の恋人は喜怒哀楽が激しく時には暴力的になる問題を抱えており、彼女の友人たちは
心配するが南湘自身はなかなか離れられないでいた。
陸上選手を目指す唐宛如は見た目は色が黒く野生的だが、4人の中では一番家庭的で傷つきやすい。
誰よりも友人達のことを思う心やさしい面を持っていた。
様々な事情を抱えたそれぞれの生活に少しづつ変化が起きていく。

所感

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大陸の作家・郭敬明の人気小説のドラマ版。
映画版は全4部?5部作ぐらいあり、全て作家自身が監督しておりありえないほど
ゴージャスな作りになっている。
それと比べると正直…セットから衣装から全てがショボい。
もっと言えば、メインの女性4人も映画版に比べると居たって普通。
特に一番のセレブであるはずの顧里がまったくもってそう見えない野暮ったさはかなり気になった(一番右)。
ただこれにも理由があるようで。
とは言うものの映画版がかなり現実離れした世界観になるほど製作費を使っていたようなのでそれと比べるのは酷。
連続ドラマとしてはこの程度でちょうど良いと思った。
しかし、だからなのか製作過程から原作者が色々と横ヤリを入れて現場は混乱。
映画版では周崇光を演じている陳學冬が端役で出演していることから始まり、当初顧里役を
演じるはずであった売れっ子女優の戚薇も原作者の入れ知恵なのか直前で降板。
陳學冬に関しては親まで出てきて撮影中にも関わらず降板させる、させないで揉めたりと散々。
ドラマ版の監督は台湾ドラマの名監督・瞿友寧なだけに製作前から期待されていたものの出鼻をくじかれることに。
微博上で不毛なやり取りが続いたものの、最終的にはドラマ版に関しては原作者は関与しないということで一件落着。
関与というか自分の作品とは関係ないぐらいの強い主張だったみたいだけど、一応クレジットには原作者の名前はあり。
と、ボロボロな状態になりつつも何潤東が懸命に瞿友寧を支持する声明を出したりと、
出演陣とのコミュニケーションには問題はなかったようで。


で、出来上がったドラマ自体はとっても地に足がついた内容になっていた。
オーバーな表現や仰々しい仕掛けもBGMもなく、一人の一人の
内面を台詞のない表情で捉えたり、ちょっとした間でそれぞれの微妙な関係を
表したり、顔のアップの多様でそこに漂う空気感を見せたりと
微に入り細にわたる演出はさすが、瞿友寧。
大陸ドラマにしては珍しく同時録音なので全員地声
やはりこれが吹き替えになっちゃうことでとっても白々しく聞こえちゃうのでとっても大事。
台湾俳優が3人で他が大陸の俳優なんだけど、主題歌も台湾の歌手とかそんなこんなで台湾ドラマを見ているようでした。

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 陳意涵演じる林蕭には長年付き合っている李易峰演じる簡溪がいるんだけど、何年か前に
一方的に簡溪に片思いしていた女性が目の前で飛び降り自殺をされたトラウマがある。
その自殺した女性の妹が姉の復讐から簡溪に近づいてきて、二人の関係はぎくしゃく。
そもそも、この話の中ではよくモテる林蕭。
親しみやすくて頑張り屋で前向きでカワイイけど平凡という男性にとっては理想であろうモテ要素がもりだくさん。
陳意涵は可愛いんだけどちょっと計算高いところが見え隠れするところがあって損しているような気がする。
なのでこの無意識だけどモテる系の役も実はわかってるんだよね~って穿った見方をしてしまった。
あくまでも個人的な感想ってことで。
李易峰は大陸では超人気若手俳優だけど、正直この役では良い所は見えない。
かなり凡庸…芝居も見た目も。
感情もあまり出さないし、妹と林蕭の間を行ったり来たりして何を考えているのか最後まであまり見えてこない損な役回り

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セレブカップルの顧里と顧源。同じ苗字だけど赤の他人。
映画版だと郭采潔と柯震東が演じたカップル。
さすがにドラマ版では弱い……
顧源を演じた徐越は若い頃の金城武に似てるけどまだまだ新人なのか演技がおぼつかない。
表情が寂しげなので顧里にとことんやりこめられている姿は本当に不憫で…
正直こんなに気の強い女のどこがいいんだ!ってぐらい非常な顧里。
でも他の女性3人にはとても情が深くて、その為に精神も肉体も傷つけられたりするんだけど。
本来カリスマ性がありながらもミステリアスという設定なんだろうけど、丸顔で童顔、
健康的なスタイルの江鎧同にはどう気負ってみても無理が。

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芸術家の南湘と体育会系の唐宛如の二人。
苦労をしている分、南湘は見た目の儚さと違って一人で道を切り開いていくタイプ。
片やバリバリの体育会系でありながらもまっすぐすぎるほど真面目で繊細な唐宛如。
この対照的な二人の描き方は面白い。
独立精神が旺盛なのにDV男にハマっていく、南湘。
結局親友たちとも仲たがいしてより孤立感を深めていくのに対し、
自分に何かとやさしくしてくれた男性を一途に思い続けるが、結局「女」としては見てもらえずに傷つく唐宛如。
だが親友たちの慰めによって立ち直る。
南湘を真正面から好きだといい、支えてくれる暖男がいるのにダメダメな男にズブズブと嵌っていく様はなかなかリアル。

そんな南湘を取り合うDV男と暖男。

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巫迪文演じるDV男・席城と陳學冬演じる暖男・陸之問。
陸之問にまで手をだした席城にあきれて一度は別れる南湘だけど、結局すがられて元の木阿弥。
あげくに南湘のことを思い、分かれるように再三警告に行った顧里までも暴力で傷つけてしまう。
もう何一つ魅力がないんだけど、自分が居ないともっとダメになると思い込む典型的なダメンズ南湘にはわからないんだよね。
陸之問はハッキリと振られるも結局あきらめきれずに南湘のことを付かず離れず見守るというこれも典型的な暖男。
結局最終的には収まるところに収まるんだけど。
以前と比べてかなり見た目的に貫禄がついた巫迪文が演じると迫力あって正直怖すぎた。

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そしてこのドラマの肝となる義兄弟。
何潤東演じる宮洺と喬任梁演じる周崇光。
正式には周崇光は再婚した母親の連れ子なので血の繋がりはない。
感情を出さず、他人にも興味がないクールな経営者である宮洺だけど、何かと弟のことは気にかけていて。
そんな兄の思いを知りながらも素直になれない弟。
この二人の愛憎劇がなかなか良い。
弟は胃がんを宣告されていて生きること自体に無力になっているんだけど、兄は少しでも前向きになって欲しくて
林蕭を編集者として弟の元へ向かわせる。
結局二人して林蕭のことを好きになっちゃうんだけど、兄が他人に対して正直に感情を
表しているのを初めて目にした弟は気づいちゃうんだよね。
兄はある意味無意識に林蕭に思いを寄せていたんだけど、他人の気持ちに敏感な弟はそこを言い当ててしまう。
余命が限られている自分が林蕭を幸せには出来ないから兄に託そうとするんだけど、兄は兄で
生きようと思い始めている弟の気持ちよりも自分の気持ちを優先させることなんで出来なくて。
で、それにまったく気づかない鈍感な林蕭。
という何ともいえないトライアングルが延々と続く。
実際には林蕭は簡溪という彼氏が居るわけだから付き合うも何もないわけだけど。


この兄弟のやり取りが丁寧に描かれていてとっても良い。
互いに本音を言わずに探り合い、ついつい弟は兄に素直になって欲しくて
感情的に迫るんだけど、兄は兄で本音を言えるわけでもなくクールに振舞う。
演じる何潤東と喬任梁のバランスがすごく良い。
姿を消した弟の生死がわからず廃人のようになっていく兄の人間臭さとか、全てをあきらめたように
自暴自棄になりながらも兄のことを思い涙を流す弟。
二人とも表現力が達者なのですごく説得力がある。
そういう意味でも他の演者との力量の差が出たように見えた。
他の男女の恋愛よりもよっぽどこの兄弟の兄弟愛の方が強い印象を残した。

原作からみると、残り3部か4部ぐらいあるはずだけどそれがドラマ化することはなさそう。
この揉め方からみると、原作者も映像化する方も面倒になっているんではないかと。
一応、2部に繋がるような最後になっていたけどまず無いでしょう。